懲戒解雇が無効となるとき

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懲戒権の濫用

会社は労働者に対して様々な懲戒処分を行うことができますが、懲戒解雇は、そのうち労働者としての地位を失わせてしまうという最も重い処分です。

懲戒解雇も解雇の一種ですが、罰を与えるために行われるという点で一般の解雇(普通解雇)とは異なるものです。

(普通解雇と懲戒解雇の違いについて詳しくはこちら→懲戒解雇と普通解雇の違い~懲戒解雇としては無効でも普通解雇なら有効?~

さて、懲戒処分には、懲戒解雇のほかに、戒告や減給、出勤停止処分などがありますが、いずれも労働者に不利益を与える手続きです。

そのため、労働契約法は、懲戒処分について、次のような規定を置いています。

「当該懲戒が当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当とは認められない場合はその権利を濫用したものとして当該懲戒は無効とする」

つまり、客観的合理的理由がない場合や社会通念上相当と認められない場合には、懲戒に効力が生じない(無効)とすることによって、労働者に不利益が生じないよう保護を図ることを明文化しているのです。

以下では、懲戒処分が有効と認められるために求められる「懲戒手続きの適正さ」についてご説明します。

「懲戒処分を受けてしまった。だけど、その手続きにどうしても納得がいかない」という方は、ぜひ、こうした観点からチェックをしていただければ、と思います。

懲戒手続きに求められる適正さ

まず、会社が労働者に対して懲戒処分を下すためには、どのような場合にどのような懲戒がされるのかが、あらかじめ就業規則に定められていなければいけません。

また、その就業規則の内容は労働者に対して周知されていなければいけません。(詳しくはこちら→就業規則と解雇事由・懲戒事由の記載

それ以外にも、懲戒処分が労働者に不利益を与える「罰」であることから、その手続きは厳正に行われる必要があります。

例えば、同じ事由について一度懲戒処分を下したのに、これについて、後日再度懲戒処分を下すということは、二重の処罰が行われることになりますので許されません。

また、どのような行為に対してどのような処分が下されるかということはバランスがとれていなければなりません。同じことをしているのに、人によって処分が異なるということも許されません。

さらに、処分を下す際には、本人に十分な弁明の機会が与えられる必要があります。

これらの原則に照らして、懲戒処分が懲戒権を濫用したものと認められる場合は、懲戒処分に効力は認められない(無効となる)ということになります。


企業秩序侵害の具体的危険性

例えば、懲戒処分の有効性について厳格に判断すべきことを示した最近の裁判例として、平成22年9月10日東京地裁判決を見てみたいとおもいます。

この事案は、大学教授が受けた懲戒処分の効力が問題となった事案です。

裁判所は、懲戒を科すことができる実質的な根拠は「企業秩序維持のためである」としたうえで、そうであるならば、懲戒を科すことができるためには、単に労働者が雇用契約上の義務に違反したというだけでは不十分で、

「企業秩序を現実に侵害したか、少なくともその具体的な危険性が認められる場合でなければならない」

と指摘しました。

そして、懲戒をするためには、単に教員規定に形式的に該当するだけでは不十分で、その行為が

「学内秩序を著しく侵害ないし混乱させ、あるいはそうさせる具体的な危険性が認められることが必要」

と判断しています。

問題行為から長期間経過後の懲戒処分

また、この事案では、問題行為時から長期間が経過してからなされた懲戒解雇であったことから、このような長期間経過後の懲戒がそもそも許されるのかが問題となりました。

この点について裁判所は、長期間が経過しているということだけで懲戒解雇が不相当になるわけではないものの

①懲戒解雇が制裁罰として与えられるものであること

②そのため、被懲戒者を長期間にわたって不安定な状況に置くべきではないという要請が働くこと

からすると

①長期間が経過することによって、企業秩序が回復し、その維持のために懲戒処分を行う必要性が失われた場合や

②著しい長期間の経過後に懲戒解雇がされることによって、懲戒処分は行われないだろうという労働者の期待を侵害し、その法的地位を著しく不安定にするような場合

には、相当性を欠く懲戒権の行使として無効になるとの判断を示しています。

懲戒解雇が制裁罰として科されるということから、懲戒解雇事由の解釈や懲戒解雇を行うべき時期の判断に当たっては、厳格な姿勢が求められるべきことを示した裁判例といえます。

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併せて知っておきたい

懲戒解雇と普通解雇の違い~懲戒解雇としては無効でも普通解雇なら有効?~

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