その行為は本当に懲戒解雇事由に該当するか?

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懲戒解雇事由の解釈にあたって

懲戒解雇が有効であるためには、就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当する必要があります。そのため、懲戒解雇された場合には、就業規則に定められた懲戒解雇事由のどれに該当するのかをよく検討することになります。(就業規則と解雇事由・懲戒事由の記載

ところで、懲戒解雇事由に該当するかどうかを判断するにあたって、就業規則に記載された懲戒解雇事由の意味内容が安易に広く解釈されたりすると、処分を受ける従業員の身分は非常に不安定になってしまいます。

懲戒解雇が、従業員としての身分を失わせるという非常に重い処分であることからすれば、懲戒解雇事由の意味内容を解釈するにあたっては、安易にこれを広げる解釈は許されるべきではありません。

この点について触れた近時の裁判例(平成25年6月21日大坂地方裁判所判決)をみてみたいと思います。

「情報を外に漏らさないこと」の意味

この事案は、業務上使用するパソコンに接続して使用していたハードディスクを自宅に持ち帰った従業員が、「会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないこと」という服務規定に違反するとして、懲戒解雇されたケースです。

(就業規則では、服務規定に違反した場合でその事案が重篤なときが懲戒解雇事由に挙げられていました。)

ハードディスク内には、取引先の社名、担当者名、連絡先、交渉経過のメモ、受注数量、単価等の情報が入っており、会社は、ハードディスクを自宅に持ち帰る行為は、このような情報を外部に流出・頒布する危険性を著しく増大させる行為であって「外に漏らさないこと」に違反する行為であると主張していました。

しかし、裁判所は、ハードディスクに保存された情報が外部に流出したことは確認されていない以上、自宅に持ち帰った行為自体が「会社の業務上の機密・・・を外に漏らさないこと」に該当するとは言えないと判断しました。

会社は「ハードディスクを持ち帰る行為は、情報を外部に流出する危険性を著しく増大させる」のも主張してましたが、この点についても裁判所は次のように指摘しています。

・懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべきであり,拡大解釈や類推解釈は許されない

・情報が外部に流出する危険性を生じさせただけで「情報を外に漏らさないこと」という服務規律に違反したことと同視することはできない

懲戒解雇事由の安易な拡大・類推解釈が許されないことを示す例として、参考になる裁判例です。

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