会社から従業員に対する損賠賠償請求~居眠りが原因で機械が壊れた!

居眠りを原因とする機械の損傷

従業員の不注意による損害について会社が損害賠償を求めた事案として、名古屋地方裁判所昭和62年7月27日判決を紹介したいと思います。

この事案は、工作機械等の製造販売を行う会社が、従業員が深夜労働中に居眠りをしたことが原因で高額な機械を傷つけられたとして、従業員に対して損害賠償を求めた事案です。会社が求めた賠償額は合計1110万円に及びました。

軽過失か重過失か

裁判所は、判決の中で、

① 高度に技術化され、急速度で技術革新の進展する現代社会において、新鋭かつ巨大な設備を擁し、高価な製品の製造販売をする企業で働く労働者は、些細な不注意によって、重大な結果を発生させる危険に絶えずさらされていること

② 終身雇用を前提とする長期にわたる継続的関係においては、労働者が作業に従事中の些細な過失によって、使用者に損害を与えた場合について、使用者は、懲戒処分のほかに、その都度損害賠償による責任を追及するまでの意思はなく、むしろ、こうした労働者の労働過程上の落度については長期的視点から成績の評価の対象とすることによって労働者の自覚を促し、それによって同種事案の再発を防止していこうと考えているのが通常とされていること

を指摘した上で、

① 原告と被告の雇用関係も、終身雇用を前提としたものであったこと

② 原告においては、これまで従業員が事故を発生させた場合、懲戒処分については就業規則にも規定され、また、これに従って処分された事例があるのに対して、損害賠償請求については、何ら規定がなく、また過失に基づく事故について損害賠償請求をした事例もないこと

③ 原告の従業員の過失で起きた事故に対する原告のこれまでの対処方法、被告の原告会社内における地位、収入、損害賠償に対する労働者としての被告の負担能力等

を考慮すると、

「原告は、被告の軽過失に基づく事故については労働関係における公平の原則に照らして、損害賠償請求権を行使できない」

としました。

そして、本件では、ミスが重大な結果をもたらしかねない危険な作業中であったにも関わらず少なくとも7分間の居眠りが行われたことからすると、軽過失とは言えず、被告は損害賠償請求を免れることはできないとしました。

賠償すべき金額

そうすると、次に問題となってくるのは、被告が賠償すべき金額です。

裁判所は機械に傷がついたことによる損害は333万6000円であると認定した上で、さらに

「労働過程上の過失もしくは不注意によって生じた事故については、雇用関係における信義則及び公平の見地から諸事情をさらに検討斟酌してその額を具体的に定めるべき」

として

① 原告、被告の経済力に圧倒的格差があること
② 会社が機械保険に加入するなどの損害軽減措置を採っていなかったこと
③ 深夜勤務中の事故であって被告に同情すべき点もあること
④ これまでの物損事故に対する取り扱い状況

などを勘案すると、被告が賠償すべき金額は、損害の4分の1に該当する83万4000円及び弁護士費用10万円の93万4000円であると結論づけました。

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shita


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