懲戒に先立ち自宅待機(謹慎)命令を受けた場合、給料はどうなるのか?

懲戒に先立つ自宅謹慎中の給料支払い義務

以前に、懲戒処分に先だって行われる自宅待機が違法となる場合について触れましたが(⇒こんな自宅待機命令はありなのか?!~自宅待機命令が違法となる場合~)、そのほかに、懲戒処分に先だって自宅待機(自宅謹慎)が行われる場合に、その間の給料はどうなるのかという問題をとりあげます。

この点について述べた裁判例として名古屋地裁平成3年7月22日判決があります。

謹慎期間を欠勤扱いとする?

この事案は、製鐡所の構内輸送の業務に従事してきた労働者が作業指示等を巡って同僚との間で口論となり暴行を働いたとして懲戒処分がなされるにあたり、処分がされるまで間、8日間の自宅謹慎が命じられ、その間の賃金が支払われなかったというケースです。

背景として、この会社では懲戒問題が生じて自宅謹慎が命じられた場合には、後に懲戒処分が決定した際に、謹慎期間を欠勤扱いとする慣行があり、会社の組合もそのことを了承していたという事情がありました。

当然に賃金支払い義務がなくなるわけではない

しかし、裁判所は、このような場合の自宅謹慎は、それ自体懲戒処分としての性質を持つのではなく、「当面の職場秩序維持の観点から執られる一種の職務命令とみるべき」ものであるから、会社は当然に賃金支払い義務を免れるわけではない、と述べました。

そして、会社が賃金の支払いを免れるためには

①当該労働者を就労させないことについて、不正行為の再発、証拠湮滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由が存するか

又は

②これを実質的な出勤停止処分に転化させる懲戒規定上の根拠が存在することを要する

として、本件ではそのような事情は存在しないから、会社は給料の支払い義務を負うと結論づけています。

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