労働条件の明示義務違反について損害賠償請求が認められた例

話が違う・・・

職場でのトラブルを抱えて相談に来られる方の中には、「実は、そもそも働き始めた時から、“話が違う”と感じたことがありまして・・・」と、働き始めた当初から労働条件をめぐって不満あるいは疑問を感じていたことを話される方が少なくありません。

労働基準法15条は、使用者が労働契約の締結にあたって、労働者に対して、労働条件を明示することを義務付けています。

しかし、残念ながら、求人や採用時に労働条件をめぐって、いい加減な表示や説明がされたりする例が後を絶ちません。

この会社に課せられた労働条件の明示義務について触れた裁判例として、ある保険会社の採用過程における説明のあり方が問題となった平成12年4月19日東京高裁判決を紹介したいと思います。

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採用段階での説明との食い違い

この保険会社は、それまで臨時的にのみ中途採用を行っていましたが、優秀な人材を確保するために、あるいは他業種経験者からの人材確保のために、中途採用を計画的に進めていこうとしていました。

ただ、一方で、新卒採用者との公平感なども考慮して、内部的には、中途採用者の初任給について、新卒同年次の定期採用者の一番下の格付けによって定めると決定していたのです。

ところが、この保険会社は、中途採用を進めるにあたって、応募者に対してはそのことを明示せず、求人広告や面接、社内説明会での説明では「給与条件について新卒同年次定期採用者とは差別しない」旨の説明をしていました。

このような説明を信じて入社してきた原告が、あとになって、実は、新卒同年次の定期採用者の一番下の格付けになっていることを知って、給与の差額の支払い等を求めて提起したのが本件訴訟です。

労働条件の明示義務

裁判所は、このような会社の求人にあたっての説明は、労働条件の明示義務を定めた労働基準法15条に違反し、また、雇用契約締結に至る過程における「信義誠実の原則」に反するものとした上で、会社は、これによって精神的損害を被るに至った者に対して損害賠償義務を負うと判断しました。

職場を決めるというのは、中途採用の場合は言うまでもなく、どんな形であっても、人生における大きな決断の一つです。

その判断にあたって前提となる労働条件について、事実と異なるような説明が行わた場合には、このように会社が損害賠償義務を負わなければならない場合も出てくるのです。

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